ひとかげ

…姉さん、おいらはもう、完全にシャッポを脱いだよ(しをん的言い方)。
すばらしい!すばらしい!!ブゥラボォーーー!!! です。
実は、「はじめに」にばななさん自身が書かれているとおりのことを、私も思っていたのです。
「なんで、今さら?」と。
しかし、いろいろな才能との出逢いや、ばななさんがこの14年で体験したことのすべてが、この「ひとかげ」を産み出さんとしたのだなぁ、ということは読んでじんわりと感じることができた。
しかも、私は「ひとかげ」のほうが断然好きだ。
かつての「とかげ」は、『とかげ』という短編集に入っているから読んでいたけど、あの中ではなんだか(表題作なのに)印象が薄かったのです。他のが濃すぎるてのもあったけど。
しかし今作はおこがましながらも言うと、「ああ、これはひとつの作品、一冊の本として、ちゃんと成立して、存在している」と感じた。
たぶん、私のほうも初読から10年ちかく経っているからなんだろうけど、ぐっとくるところがいくつも、いくつもあって、最後の、とかげがむにゃむにゃと言うところなんて、胸にひびいてひびいて、涙をとめることができなかった。


「もしもいるなら、止めてくれればいいのに。
でも止めてはくれない。
自分でやるしかないのね。
どんなにひどいことを見ても、なんでも起こりうるって思うしかないのね。」


同じ台詞が「とかげ」にもあるけれど、今の自分の胸にひびく、そのおおきさの度合いがまるでちがうのです。
ばななさんの、そこへのもっていきかたもすごくうまいし… すごいなあ、さすがだなあ、と結局は幼児のような感想しか出てこないわけですが。
ぜひ、多くのひとに読んでいただきたいものっ!