サウスポイント

やっと買って、読みました。
[rakuten:book:12854391:detail]
高校生のころ読んで「なんてすてきなおはなしでしょう」とキラキラした思い出のあるこの本↓

その後日談、続編が「サウスポイント」です。ハチとマオがあんな風にすてきに、宿命的に結ばれあったことに、昔からのファンとしてはとっても感慨深いものがありました。
ばななさんが「『サウスポイント』のモトネタは『悪魔とダニエル・ジョンストン』」とおっしゃっていたので、読む前に映画『悪魔とダニエル・ジョンストン』のことを調べておいた。そしたら見事にそのまんまな内容だった。映画については町山智浩さんのこの記事が詳しいのでよかったらご覧ください。
初恋の女の子のことをずっと唄い続けているちょっと(だいぶ?)変わった男。そう聞いただけで「うわぁ・・・」となるはずなのになんでだろう、ばななさんの手にかかるとすごく甘く美しい物語になるのは。今回もウットリしながら読んでしまいました。あらがいがたい大きな流れにたゆたう恋。そういうものに私は本当に弱い。ばななさんのこういうおはなしが本当に本当に大好きだ。思春期からこれでずっと育ってきているから、「そう、そう!これこそが恋だよね!!」と思ってしまっている節もある私。そりゃあなかなか恋愛できないはずです。がっくり。でもめげないぞ。
今回もはっとすることばがいくつもいくつも書かれてあって、心打たれました。いくつか御紹介。

期待すればするほど、悲しみも重くなる。
会うたびにひとつ、またひとつと持っていた希望を消していくあの感じは心にしみのように残っている。しかも電気のスイッチを無意識に切るようにではなく、ろうそくの火をひとつずつ吹き消していくみたいに、より自覚的に消していく感じだった。
人は変わらない、結局その人の好きなようにしかならない、そのことをいやというほど思い知らされた。「もしも私たちを愛しているならあなたの生活を変えて」という類のことが、どれだけ意味がない考えかということも。その自分とあなたの間にもしもお酒が入ったら、お酒を欲する習慣にさえも人間の心は負けてしまうことがあるという単純な事実を。

美しいものを集めて、たくさん集めて、ポケットに入れて、こぼれるほど意地汚くぱんぱんにつめこんで死んでいきたいと私は思っていた。それだけがこの不自由な人類にゆるされた尊厳だと思っていた。

そのときは、自分の内側にこそ、全てをだめにするものがひそんでいるなんて思いもしなかった。自分が強くあろうとすればどんなつらいことでもちゃんと通り過ぎて行く、とは決して思えず、まわりの状況に振り回されて人生は決まっていくという無力な感触しかなくて、不安で、誰かに頼りたい気持ちでいっぱいだった。

「小さい時から、大好きなあなたが頼んだことを、私が一回でも断ったことある? それが全部の答えだよ、それ以外に私の気持ちはないの。」

「きっとね、私たちみんなわかっているのよ。ほんとうはね。これからのこともこれまでのことも。神様が目隠ししているだけなのよね。せいぜい楽しみなさいって。」


どれかひとつもではっとしたものがあったかたには、ぜひ本を手にとって読んでいただきたい。そしてもっともっと多くの人に読んでいただきたい、ぜひ「ハチ公の最後の恋人」と合わせて。ばななさん御本人も日記で
「じつに売れなさそうだが、これまでに自分の書いたもののなかでいちばん好きな小説が更新された『サウスポイント』ができあがった。『ハチ公の最後の恋人』の続編で、『キッチン』『ハネムーン』の流れを組む『よしもと調宿命の恋愛もの』の集大成だ。」
とおっしゃっています。みんなで買いましょう。(どんな宣伝だ